2011年のクロノメトリーコンクールで、市販品のダブル トゥールビヨン °30は1000点中915点という得点で優勝した。6姿勢での姿勢差誤差は実に0・3秒から0・8秒以内。彼らが精度を誇るのもむべなるかな、だ。
そして、もうひとつの特徴が、仕上げである。グルーベル フォルセイと聞けば、私たちは卓越した面取りや筋目仕上げを思い浮かべる。しかし、より重要なのは、抵抗を減らすための仕上げである。この点で、グルーベル フォルセイにかなうメーカーは存在しないだろう。
初出2015年。25°傾いたキャリッジを24秒で1回転させる「トゥールビヨン 24 セコンズ」(2007年)のムーブメントと外装を改良したモデル。文字盤は素っ気ないが、インデックスはグラン・フーエナメルの象嵌仕上げ(!)である。手巻き(Cal.GF01r)。41石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KRG(直径43.5mm)。3気圧防水。3364万円。2015年のジュネーブ ウォッチ グランプリで金の針賞を受賞したトゥールビヨン24セコンズ ビジョン ホワイトゴールド Ref.91005850も銀座ギャラリーに在庫する。本作の特徴である裏側に大きく飛び出たキャリッジのみをドーム型サファイアクリスタルで覆うことで、それ以外のケース厚を13.65mmに抑えた。装着感が悪くなりそうだが、腕に載せても違和感はない。理由は「腕の凹みに収まるようにドームを設計したため」(フォルセイ氏)。ケースは外部メーカーの製造だが、ムーブメント同様、卓越した仕上げを誇る。
例えば、ダブル トゥールビヨン °30。フォルセイ氏が意地の悪い表情で質問してきた。「このモデルの主ゼンマイのトルクはいくつだと思う?」。最も力の弱いプゾー7001が500g、ETA2892A2は800g。800gはあるはずと答えたところ、彼はその半分だと言う。
「摩擦こそが時計スーパーコピー時計のリスクだ。今の時計は精度を上げるために振動数を高めるが、私たちはそれを好まない。他社を批判しているわけではないが、私たちは摩擦を減らし、弱い力で高いパフォーマンスを出したい。香箱の回転を速くし、ホゾを丁寧に磨き、穴石にオリーベを使う理由だ」。そのためにもメカニズムは手で仕上げるのが重要、とフォルセイ氏は語る。
「今では手仕上げはほとんど残っていない。でも最高の手仕上げは、パフォーマンスを出すし、工業化された製品にはない美しさもある」。他の人間が言うと説得力はないが、ステファン・フォルセイ氏には言うだけの資格があるだろう。
筆者が思うに、今のグルーベル フォルセイに比肩するプロダクトはひとつしかない。卓越したメカニズムとそれを支える手作業は、戦前のロールス・ロイスそのものである。ひょっとしてフォルセイ氏は、祖父がエンジニアを務めていた時代のロールス・ロイスを、腕時計で再現したいのかも知れない。戦前のロールス・ロイスは、見ようと思っても不可能だ。しかしグルーベル フォルセイは、銀座に出向けば実際に見ることができるし、その価値は間違いなくあるのだ。 |