具体的な相違点を述べたい。リファレンス80360から56061まで、チタンケースは共通だった(詳細は110〜111ページを参照)。回転ベゼルを支えるチムニー(煙突)に刻みはなく、ケースサイドの形もフラットだ。しかし56062以降、チムニーには5分ごとのスリットが入り、回転ベゼルの位置決めがしやすくなった。またラグが裏ブタ方向に曲げられ、装着感が改善されている。ベゼルとケースの隙間も、以前に比べるとはるかに小さい。中身はそのままに、外装を大幅に改善したモデルが、エアロスペースⅡと言えるだろう。
こうした進化をもたらしたのは、ブライトリングのケースサプライヤーであったMRPである。「プルトン」のチタンケースを製造した同社は、ブライトリングとの取引を拡大。やがてブライトリング向けチタンケースの製造を請け負うようになった。同社が得意とするのは、精密な鍛造(当初は冷間鍛造、現在はブランド時計コピー時計業界でも珍しい温間鍛造)。エアロスペースⅡの回転ベゼルや裏ブタに施された深い刻印は、MRPならではのものだ。
また同時期には、搭載するキャリバー56の品質も安定してきた。56が採用したTN液晶は、スイスでは新しい試みだった。そのため当初は品質にばらつきがあった。しかし液晶の表示ムラが収まった結果として、下段の液晶表示を拡大できた。外装と機能のブラッシュアップを果たしたエアロスペースII。以降エアロスペースは、この方法論を継承しながら、モデルチェンジを繰り返していく。 |